
この二人が並んで登場すると
「インスタント沼」やら三木聡作品を引きずってる私は
どうも笑う笑う・・・。
いや、そういう話じゃなかったですね〜。

村の半分以上が高齢者っていう村で
約3年ほど診療をしていた医者が突然失踪した。
あれほど慕われていたのになんで?
しかもあれほど村の人々との接点を持ちながら
誰も知らなかったその男の正体。
その嘘は罪ですかと聞かれたらやっぱり罪だ。
ただ、それはホントに彼だけが悪いのか?????

ひとりのおばあちゃんをここまで悪化させなくて
済んだかも知れんと思うと
感想は複雑だ・・・・・。
家族の身になって考えたら冗談じゃないって話だもんな・・・。
大学病院ってとこはまるでベルトコンベアーみたく
患者をさばく、その数をせかされるところで、
確かに伊野のようにいちいち話を聞いてあげる余裕など
あるはずもなく、
ましてや、ボランティアで
時間外労働なんかしない。
家をまわってまで「大丈夫か〜」なんてしてくれない。
そういうところじゃないんだ。
それはわかってる。
最先端医療は大概の病気を治してはくれるだろう。
ただそこに欠けているものがここにはある。
そういうことなんだろうな・・・。
ワタシのかかりつけの内科のお医者さんも
大概診察時間が長い。
なんでかっていうとやたらしゃべってる。(爆)
笑い声が外で待ってるうちらにも聞こえてる。
でもそれがどれだけ患者の気持ちになって
親身に話をきいてあげてるか
安心させたげてるかわかってるから
よほどしんどくて切羽詰ってるとき以外だったら
これはこれでありだと思ってる。
そういうことって大きな病院じゃやりたくてもできないのな。
チームバチスタで言うところの愚痴外来だったら
伊野はぴったんこの「医者」だったと思うんだ。
でもこの村では診療の科目を問わず
オールマイティに診なきゃいけなかったはずで
それってちゃんと医師免許もった
普通のお医者さんでもお手上げじゃないん???
どんなに夜間の勉強をしても
あまりに足りなさ過ぎる知識と技術は
思いやりとか愛とかそういうもんだけで
人を救えるなんて思い上がりだってこと
やっぱり思い知らされるんた・・・。
しかもそんな「シロウト」が
神様のように祭り上げられてしまった。
そりゃあんな小心者の男が
その期待と重圧に耐えられるわけないだろう・・・。
でも、立場変わって、
夜もろくに眠れずに過酷な労働をしているお医者さんに
でもそれ以上のことが言えるだろうか?
あなたの持っている知識や技術が
いかにすぐれていても
患者が欲しているのはそれだけじゃないよと
伊野が愛されていた理由それこそが
あとひとつあなたに必要なものなんだよと
そんなことはきっと現場の医師たちはみんな
わかってると思う。
これから希望に燃えて人の命を救おうとしてる
お医者さんの卵たちはもっとそう思ってるだろう。
でも実際、忙しさの中で磨り減っていく気持ちは
心のケアとか
人の話を聞いてあげる余裕とか奪ってくんだ・・・。
みんなが伊野をホンモノの医者にしたんじゃないのか?!
刑事のその言葉が痛い。
そして伊野がいなくなった後
また無医村になってしまったことへのフォローは
ないまま映画は終わってる。
八千草薫扮するおばあちゃんに
病院職員のかっこでお茶を注ぎにくるくらいだから
決してええ加減な人ではなかったと思うんだけど
それでもな〜・・・・。
救いのない映画でした。
泣くとか感動するとかいうタイプのものではなくて
思いっきり問題提起してばっさり終わっちゃう、
そういう作品だったかなと思います。
伊野がやってたことは本来家族がしてあげることでもあります。
遠く離れて年老いた親が暮らしてるひとは
身につまされる話でもありますね。
そして隣近所がどんなに離れていても
赤の他人が何でも助け合ってた場所から
いくら最先端医療の受けられる病院へ
入院ができたとしても今度は
誰がひとりぼっちの寂しさを救ってくれるんでしょう?
それはそれはいろんなことが未解決のまま
ポーンとほおりだされた形のショッキングな映画でした。
PS:机の上でひっくり返ってもがき
ひとしきりジタバタしたあと飛び去っていったカナブン。
伊野がある種うらやましそうに見ていたのが
印象的でした。あまりに彼そのもので・・・。
そうですよね。だから次何時帰ってこれるか聞いた伊野に1年後と答えるりつ子に「えぇぇぇ?そりゃないんじゃない?」って思っちゃいましたよ。普通ならともかく、もしがんじゃなくて本当に胃潰瘍だったとしても、もっと帰るべきだし…。
もしあそこで月に1回は帰りますって答えていたら、伊野は失踪しなかったんでしょうかねぇ?
松重さんの刑事って、観客は伊野の側で見てしまうからすごく嫌われ役ですけど、実は重要ですよね。彼が事情聴取で聞いてくれてることって、私たちが聞きたいことばかりだったし。
ワタシは両親とも亡くなってますが
そもそも長女が三歳のときから
自分の親と同居できたから
親の最後も看取ることができたし
看病もできた、
でも家を離れ嫁いだ先がとんでもなく遠かったら
気持ちがあってもなかなか帰れない、
それは医者のような特別忙しい職業でなくても
自分の親ってないがしろになりがちです。
一概に愛がないとは言えない。
どうなんでしょうね。マメに帰れてたら
それはそれで明らかにバレるから
どのみちいられなかったんじゃないでしょうか。
気持ちがあっても救えない、どうしていいかわからん、
もう致命的なとこまで行ったのが
りつ子さんのケースですからね・・・。
人間を計るはかりがあったとしたら、
伊野は既にはじかれていたのでしょうか(笑)?
計れないところが面白いところで、
あの笑っていない鶴瓶の目がポイントで?
もし待合室に自分しかいなかったら、
余計に不安になり、健常者も異常者に?!
いつか待合室が似合うようになり、
まるで井戸端のような日常ミーティングの場に慣れてしまうのかなぁ(汗)
カナブンとか、溶けかけたアイスとかで、いろんな心情とかを表すのが上手いですよね。
何気ないショットでも「どんな意味があるんだろう」って考えてしまいます。
西川監督はやっぱりすごい〜♪
そちらのブログはすでに社交場。(笑)
cyazさんももしかして笑ってるようで笑ってない?!
ハイ、ワタシはひとりでも居座って
ちょっと話聞いて〜や〜って
あなたをつかまえてペ〜ラペラペラ
しゃべり続けているでしょう。ハハハハハ。
ワタシもカナブンとアイスは印象的でした。
思いっきりそのときの気持ちを
そういうショットで見せてしまうってのが、
うまいな〜って・・・。
もしかしたら他にもあった???